事業にかける思い
「農業への恩返し」
これがこの会社を設立し、農業技術開発に注力する私の原動力です。
【生産者としての背景】
私は30歳代に脱サラしてIターンで10年近く専業農家をしていました。まったく農業の知識もなく始めたので、それは失敗と勉強の連続でジェットコースターのような経営でした。(結果的にたくさんのお金を使うことにもなりましたが)農業については一般的に言われる3K(きつい、きたない、危険)よりも、自分の意思でものをつくり、食べ物として提供できる楽しみの方が優っていたので、苦にはなりませんでした。
2年連続台風の影響で、主要作物が全滅してしまったことが農業から撤退した直接原因ですが、実際には毎年何らかの原因で生産が安定しませんでした。そのため売上は不安定で経営としてはいつ現金不足を起こしても不思議ではない状態でした。 売り先や販売単価に問題があったわけではないので、原因はただ一つ「安定してつくれない」ことでした。
【農産物流通の世界から農業を見る】
農業から離れて関東で仕事を再開しました。初年度は全く別世界の仕事でしたが、3年目からは農産物流通の仕事をするようになり、販売側から農業を見るようになりました。 販売側から見る農業は生産側から見るものとは180度違うものでした。生産側は自然というコントロールできない要素からくる不安定さと闘っていましたが、販売側はその供給側の不安定さに加えて実需の不安定さと実需者側から要求される絶対供給と言うさらに厳しい条件下で闘っていました。契約産地の開発する仕事をずっとやっていたので、とても多くの産地を見て来ましたが、共通して「生産の不安定」という課題を持っていましたし、年々課題は厳しくなっていくように感じました。
自分が農業をしている時から高齢化と気象の変動については、肌感覚で厳しくなっていると感じていました。流通の仕事で全国の産地を回るようになって、その感覚はより強くなりました。この2つが「生産の不安定」という課題の解決が進まない要因であることは明らかでした。高齢化は解決に向かう意欲を削ぎ、気象変動は経験で積み上げた技術を砕きます。このままでは10年、いや5年後に国内生産は各地で機能不全を起こすという思いが常にありました。
しかし、7年前に転機が訪れました。
【転機~新しい世界の幕開け】
流通の世界に入ってからもライフワークとして「今の農業技術をいかに後世に伝承するか?そのために現場データを如何に収集し、誰もがその技術を使えるようになるか?」というテーマで情報収集していたのですが、非常に可能性を感じる人たちに出会ったのです。
その人たちとは当社の取締役でもある岡本さんと岡田さんで、お二人は農業現場の課題に対して、データ収集と解析ノウハウを駆使して解決方法を導き出すプロとして15年以上の実績を持っているのですが、当時、特に私を引き付けたのは、土壌硬度(=土壌の硬さのこと)を計測して作物の生産に最適な数値を見つけ出すという科学的なアプローチでした。新規就農とは言え10年近く専業でやってきたにもかかわらず、土壌の硬さについては柔らかいほうが良い程度しか考えていませんでしたし、pHやECという土壌の化学性以外でデータを活用することは、感覚的で曖昧なことが多い農業の中でとても新鮮でした。この時点ではまだ可能性があるというレベルでしたが、それから約7年にわたって土壌硬度と作物の生育との関係性を見るに至っては、それは確信に変わりました。
「人が管理できる要素のうち、作物の生育に最も強い影響を与えるのは土壌硬度である」
「土壌硬度を変えることで、作物の成長もコントロールすることができる」
※土壌硬度:土壌の硬さのこと。土壌物理性を数値として捉えるために、土壌中(地中60cmまで1cm毎)の硬さを測定している。
今では自信をもって上記のことが言えます。なぜなら、客観的なデータをいくつも見てきたからです。残念ながら、今現在は詳細についてお話しできませんが、今後、当社が提供していく製品やサービスを通じて、生産者や農業関係者の皆さんの誰もが理解し、活用していけるように最大限努力するつもりです。
【天気に打ち勝つ技術を求めて】
同じような天気でも作物の結果が違うことはよくあります。同じ畑でも畑の中でばらつきがあるところとほぼ揃っているところがありますが、それが土壌の硬さの違いによるものだと考えている生産者は少ないのではないでしょうか?何枚もの畑を1枚にした畑で、もともと畔であったところの生育がいつも悪いという経験をしたことがありますが、いくら肥料を多い目に入れてもほとんど変わらなかったのは、土壌の硬さが問題であったことが今なら理解できます。
天気をコントロールすることはできませんが、天気の影響の受け方を技術で回避することは可能だと今は自信を持って言えます。
私は、「天気が悪くても安定して生産できる」農業を目指し、そのための土壌評価や解析、技術の提供を通じて農業に貢献したいと考えています。
代表取締役 南 吉幸